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その少女は今日も天を見上げていた。
彼女の為に集められた物らしき様々な玩具を山の様に積み、一個、また一個と塔を作り上げてゆく。
上に乗せては下に戻り新しい玩具を広い上に積み上げる。その繰り返しによって作られたこの山はバベルの塔の様で、いつ崩れてもおかしくは無い。
そんな玩具の山の上に少女は立ち天を見上げ小さな手を伸ばす。
天に広がる星の輝きを掴もうと必死にその腕を伸ばす。
届く事の無い筈の無いそれに手が届いた時、少女はその現実を思い知る。いや、再確認すると言った方が正しいだろう。
彼女が毎日の様に見上げ、必死の思いで掴み取ったその空はまごう事無き贋作。インクという名の液体によって一面の天井に塗描かれた偽りの星空なのだから。
ここは“監獄塔”、幼き少女が投獄されている深く大きな塔。
壁に窓は無く、地面には白黒のタイル。周囲には子供用の玩具、壁には砂嵐が常に写しだされている液晶、そして天井には少女が見上げる偽りの空が描かれていた。
コレは一人の少女が本物の星空を見に行く物語。
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