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カチ、カチ、カチと古びた秒針が進む音が響き渡る。
時計の針は後数分で23時を指し示す所まで進んでいる。
飲食店でさえ店を閉じる所が出てくる時間帯だ。
かくいう私が働いているこの古本屋も23時には閉店になっており、
ボチボチ閉店作業に取り掛かる時間帯なのだが、私はその作業に取り掛かれずにいた。
いつもならこんな時間に客など来る事は無かったのだが、
何故かこの日だけは珍しく客が来る始末となっている。
飲んだくれのオヤジがふらふらになりながら、買う事は稀にあったのだが、
今日のお客は少々と毛色が違っていた。
背は私より遥かに小さく、折れてしまいそうな華奢な手足、
そして人形の様に整った容姿をした少女が西洋風のフリフリのドレスを身に纏い、
この深夜の古本屋に姿を現したのだ。
最初に店に入ってきた時その可憐な容姿に見とれ声をかけるのを忘れてしまっていた。
少女が店に入ってきてかれこれ10分が経過した。
しかし少女は一向に本を手に取らない。
本棚の端から端までまるで何かを探しているかの様にじっくりと見渡しているのだ。
(お客さんをじっと眺めて自分は何をしているのだろうか……)
一度少女から目を離し事務作業に戻る。
今からでも準備すれば日付が変わる前に家に帰る事が出来るだろう。
閉店作業を始めた瞬間、ふと何か異変を感じた。
何者かにじっと見られているかのような感覚だ。
その視線は私の背後から感じて……。
恐る恐る背後を確認すると、そこには先程の少女がすぐ後ろに立っており、
じっと私の顔を凝視していた。
「あ、あの……」
口どもりながら声をかけると少女はにこりと笑いこう言った。
「おねぇさん“眼”キレイだね!」
「えっ⁉」
「それだけ!じゃあ私帰るから、“夜道には気を付けてね”」
いきなりの事で何を言われているのか分からなかった。
深夜近くにやってきた一人の少女は古本を買いに来たのでは無く、
私の“眼”を見てキレイと言っただけであった。
気になる本が無かったのか、
それとも只の冷やかしから出た言葉なのか分からなかったが、
何故か私の心臓はこれまでに無い速さで脈を打っていた。
(可愛い子、だったな・・それに少しいい匂いがしたような・・・)
「ハッ‼ 私、何考えているんだろう」
突如現れた年端も行かない少女相手にとても嫌な事を考えていた気がする・・・。
頭を必死に横に振り閉店作業を終え私は駆け足で家に帰る事にした。
あの場所に居たらまた余計な事を考えてしまいそうだったからだ。
「それは正に“恋”だね」
「変なこと言わないで‼」
翌日、私は大学に行くと抗議の合間で昨晩の事を友人に話していた。
「変では無いさ。とても尊くて美しいモノだと思うよ。私は友人Aとして心行くまで応援するさ」
「顔に面白そうって書いてあるよ」
「それは常に書かれているから否定はしないでおこう」
相談した第一声がコレである。
唯一の友人とも言える彼女【間宮夏織】は相談したいと言ったら、
真剣な面持ちで『引き受けた』と言った。
にも拘らず話の中盤からニヤケ顔が止まらなくなり最終的には“恋”と言い出したのだ。
それも学院の喫茶店の中で高々と。
周囲からの視線が痛い……
「こっちは真剣に相談しているのに…」
机に顔を突っ伏しながら文句を言うと彼女は『ごめんごめん』と笑い、
私の口元にケーキを差し出した。
何だか餌付けされているみたいで少々腹只しかったが、
甘いモノには罪は無いのでありがたく頂戴する事にしよう。
「それで、【瞳】はどうしたいんだい?」
「どうって、別にどうも……」
「そんな事は無い筈さ。君はその少女とどうにかしたいから私に相談してきたのだろう」
彼女は意地悪そうな笑みを零しながら私のおでこを指で突いてきた。
「それは……まぁ、そうだけど」
「…………“ロリコン”」
「だぁ!!言うなぁ!!!」
自分でも薄々気付いていたその言葉に頭を抱えて再び顔を埋める。
クスクス笑いながらお詫びの証と言わんばかりに私の口元にケーキを運びながら、
「そうかぁ、瞳も恋する乙女になったかぁ。しかも相手は年端も行かない幼い少女……うん、事件も事件いろんな意味で大事件ですな。コレは密かに好意を寄せていた学部の男子共の阿鼻叫喚が想像できるぞ」
と愉快そうに笑っている。
「何ソレ……何の冗談?」
「君は自覚は無いだろうが中々な美貌と容姿を持っているのだぞ、それこそ何処の美術館に売りに出してもいい位だ。人との一定の距離を置いているから誰からも声をかけられないだけで君は一種の高根の花だ。現に私の元に『文乃さんって彼氏っているのかな?』なんて確認を取る男がいる位さ!まぁそんな野郎共には『私は知らないな。只、それを私に確認しに来る君の様な人はあまり好ましくないだろうがね』と御断りの言葉をプレゼントしているけどね」
彼女は嬉しそうに笑いながらコーヒーを飲んでいる。
私のあずかり知れない所でそんな事が有ったとは。
まぁ直接来たとしてもお断りをしていただろうから別に問題は無いのだけれども。
「何にしろもう一度会わないと話にならないけど、そこは問題ないと思うよ」
「うそ!どうして?」
「そんな時間帯に少女一人が出歩く事自体がおかしいだろ。聞いた感じ保護者同伴ってわけでも無かったみたいだし、それなら一番可能性として高いのは保護者が必要ない場合、つまり親戚のお子さんが挨拶に来たって所かな、だから“おねえさん”って呼んだって考えられないかな?」
物凄く理にかなった推理に私は開いた口が塞がらなかった。
「大学卒業したらその道で食べて行ったら?」
「それも悪くないわね」
彼女は得意げに笑い再びコーヒーに手を付けた。
ひとまず海外にいるおじさんとおばさんにメールを送り返事を待つことにした。
打ち終えて顔を上げると先程と打って変わって難しそうな顔をする夏織の姿がそこにはあった。
「どうしたの?」
「いや、今後輩から変な話を聞いてね。瞳の所の古本屋って商店街の外れにあるのよね?」
「うん、そうだけど」
「……なら夜道に気を付けた方が良いわ」
「え⁉」
「あそこの商店街で出るらしいから」
「で、出るって……なに…が?」
夏織は一呼吸置き、その場の雰囲気を出すようにおどろおどろしい声でいった。
「夜に町に遊びに出る子を襲う手足の無い8つの眼と巨大な牙を持つ黒色の化け物が‼」
「……お化けじゃなくて?」
「お化けじゃないみたい」
そういうと後輩から送られてきたであろうメッセージを私の方に見せてきた。
【○○市 恐怖の都市伝説】
「何これ?」
「最近学生間で流行ってるらしいわよ。ネットの掲示板とかに乗っているのを誰かが改変して学生間の掲示板様に作り替えたらしいけどリンクで飛べるサイトがかなり凝っているみたいで人気なんだと」
「へぇ、知らなかった」
「まぁ私達はあまり俗世にまみれてないから知らなくても不思議じゃないわね。何せ高値の2輪なんだし」
「なにそれ」
「まぁ冗談は置いといて普通に夜道は気負付けなさい。幼い少女を守るナイトになるなら猶更よ」
夏織との昼食を済ませた私は大学を離れ再び古本屋、
“文乃書店”の店番へと向かっていった。
先程の香織の話を聞いた時、何故か昨日の言葉を思い出した。
『“夜道には気を付けてね”』
(そう言えばあれはどういう意味だったんだろう……)
その答えは当然出る事が無く、只いつもの時間が流れていった。
「ありがとうございました」
店から出ていくお客様の背中を見届け、壁に掛けてある古時計に目を向ける。時刻は既に22時を回っていた。昨日だともうそろそろあの子が来た時間帯なのだけれども……。
「もう来ないのかな……」
受付に頬杖を突きながら扉を眺めていたが時間が経つばかりで、瞬く間に閉店の23時が訪れた。
「……片付けよう」
閉店作業を行いながら今日の客の人数を確認する。
日中は殆ど開店していない為、私が開店してから閉店するまでの短い間の時間なのだが
14時~22時まで開けてきたお客様はたった3人だけ、
今に始まった事では無いのであまり気にはしないが何と言うか…。
「お店としては終わってるよね……」
このお店は無くなった両親が開いていたものでそれを私が引き継いだ形になる。
おじさんとおばさんには話を通しており、
こうして学業の合間のみ開店する事を許してもらっている。
代々続けていた古本屋らしく、入院しているおばあちゃんは私が引き継ぐ
という話をしたらとても喜んでくれた。
本当は両親との思い出が詰まっているこの場所から離れたくないだけなのだが、
それも含めておばあちゃんは喜んでくれていた。
「半分家みたいなものだけどね……」
昔の事を思い出しながら閉店作業を終えた私は、
家に戻る為に夜の商店街へと足を踏み入れた。
その瞬間、『チリィィン』と遠くの方で鈴のような音を聞いた気がした。
音の方へ眼を向けてみたが誰もいない。
(昼間変な話を聞いたから敏感になってるのかな? 商店街に現れる都市伝説の様な物だった気がするけど何だったっけ?)
ふとその内容が気になり電子端末に目を落とす。
すると先程と同じ方向から再び『チリィィン』と鈴の音が聞こえた。
慌てて正面を向き直すがやはりそこには何も無い。
というより商店街には文字通り“何も無かった”。
この時間帯がいくら人が少ないからと言ってこれ程まで人の気配が無いモノだろうか、
まるでこの世界から一人切り離されたかのような……。
そんな考えに至ったからか、それとも昼間にそんな話を聞いてしまったからか、
どうしても背後が気になってしまった。
この手のモノは背後を振り向いてはいけないのが鉄則なのだが、
どうしても振り向かなくてはならない気がする。
先程からまだ夏に入りたてなのに身の毛のよだつ様な悪寒が全身を襲っている。
それと何かに見られている感覚が背後からひしひしと・・・。
恐る恐る背後を振り返るとソレはそこにいた。
真っ黒い体。
人を丸のみ出来そうな巨大な首。
鉄さえ噛み千切ってしまいそうな強靭な顎。
そして獲物を逃がすまいと様々な方向を見渡す八つの眼。
そこにはこの世のモノと思えない黒色の化け物が存在していた。
「・・・うそ⁉」
私は慌てて商店街を駆け出した。
距離はそこそこあったが、それでもデカいと感じた。
本物はもっと巨大な図体をしているのだろう。
それにあの刃の様に鋭い歯、あんなものに噛まれたらと考えるだけでゾッとする。
恐怖に飲まれながらも必死に駆けだす。
逃げだす私に反応したのか、その化け物はこちらの気力をそぎ取るかの様に
耳を塞ぎたくなる程の強大な咆哮を放つ。
耳を塞いでその場に立ち止まった瞬間、何か小さな物体に突き飛ばされた。
あの化け物に襲われたのかと思ったが、
体には飛ばされた際に付いたかすり傷しか見当たらない。
慌てて先程まで自分が立っていた場所に目を向けると、
そこにはナニカが蛇行しながら道を抉り取ったかのような瓦礫の後が残されていた。
そしてその後を挟んだ向かい側の土煙の中にその少女が立っていた。
「おねぇさん“夜道には気を付けて”って言ったでしょ」
両手を腰に当て頬袋に空気をぱんぱんに詰め込みながら子供に叱る様にいう少女。
昨晩私の元に現れた西洋人形の様な可憐な少女だった。
時が止まったかのように少女を見つめていると
静寂を破るかのように少女は高々と名乗りを上げた。
「颯爽登場!!魔法少女マリア、おねぇさんのお悩み解決の為にここに推参!!」
と、どこかのヒーローのポージングの様なモノをとって言った。
何を言っているのか分からず只々唖然としていると、
少女は私の方に背中を向け、ある方向を見つめ始めた。
その先は先程の黒いナニカが通り過ぎて行った方向、
そしてそのナニカのうめき声のする方向だった。
「おねぇさんに悪い事をする悪しき“魔獣”め!この私が成敗してやる!!」
少女はそう言うと分厚い本を取り出し何か言葉の様なモノを語り出した。
『滲み出す混沌 灼熱の太陽 虚無と永劫を交え 弾けて燃やせ!!』
それに反応するように本が赤く輝き、少女の周りの大気が揺らぎ始める。
そしてその言葉を終えると同時にもう片方の手を突き出し叫んだ。
ブラック・サン・ライズ
【全てを焼き尽くす黒き太陽】
反射的に両手で顔を覆うが一向に何も起こる気配がない。
「???」
少女が手を差し出した瞬間、その本は輝きを無くし沈黙を保っていた。
「………あれ?」
光を無くした本を見ながら少女は首を傾げながらその場に立ち尽くす。
そして再びあの咆哮が商店街中を響かせた。
私は慌てて少女の腕を引き走り出した。
「ちょっとおねぇさん何するのよ!」
「何してるのはこっちのセリフだよ。あんな化け物に追われているのにおふざけして、絶対にあれヤバイ奴だから逃げるのよ」
「………」
少女は走る私の顔を驚いたように見つめると小さく「 」と何かを呟き笑った。
「でもおねぇさん、あれ何とかしないと危険だよ」
「今は私達の方が危険だけど」
「うん、そうだね。でもアレ放っておくとおねぇさんの大切な物壊れちゃうよ」
「………え⁉」
「だってアレ“おねぇさんが呼んだんだもの”」
「今…何て……??」
「だから、おねぇさんが呼んだの。おねぇさんが生み出した“怪異”だから今の内に何とかしないと暴れるよ」
「どういう事??」
「おねぇさんが魔力で具現化しちゃったから宿主のおねぇさんを食べて自由になろうとしてるの。だから何とかしないと何処までもどこまでも永遠に追いかけてくるよ」
「私が、アレを⁉ え、何で…だってアレ都市伝説で……」
「“怪異”はね、三つの条件が揃うとこの世に具現化するの。」
少女は走りながら背後を見つめ説明を始める。
「1つ目はその“怪異”が出現するに至る過程を生み出す場所や物など紫の事柄が存在する事、2つ目は“怪異”が具現化する為のイメージをする事具体的な容姿だとなお良し。そして3つ目は膨大な“魔力”この3つが揃った時“怪異”はこの世に具現化するの」
都市伝説にあった場所【この商店街】
具体的なイメージ【手足の無い8つの眼と巨大な牙を持つ黒色の化け物】
魔力【『おねぇさんが生み出したんだよ』】
「わ、私が魔力…で、でも都市伝説はネットにあったもので私が作っわけじゃ‼」
「おねぇさんが作ったものじゃなかったとしてもその条件が揃っちゃったからおねぇさんが生み出しちゃったんだね。だっておねぇさん魔力駄々洩れだったもん」
「魔力なんて、私知らない。けど、もしこのまま私が逃げたらどうなるの?」
「“怪異”の知能によるけど基本的には宿主、ここでいう生みの親であるお姉さんだね。生まれた“怪異”は宿主と(仮)契約状態になるからまず自由になる為におねぇさんを殺しに来るかな。そして捕まえられないと分かったらおねぇさんを弱らせに行くかも。手始めに親しい者を食べて心が衰弱した時に再び襲うとか」
「そんな・・・」
「“怪異”は宿主と見えない縁でつながれているから親しい人は直ぐに分かるし、本人に至っては直ぐに場所を特定できるかな」
何も知らなかったとしても私のせいで友人や家族が襲われちゃうって事・・・
「そんなの、ダメ。ダメに決まってるよ。でも・・・」
私には何も出来ない。
自分の置かれてる立場に絶望し逃げ惑う足が止まる。
それを予めこうなる事を予期していたのか、
塞ぎ込む私の顔を覗き込んで少女は言った。
「方法は2つ! おねぇさんがあの“怪異”を隷属させる事。だけどこれは全くの経験が無いおねぇさんにはまず難しいかな」
顎に手を置きながら首を傾げながら少女はそう言った。
「もう一つはあの“怪異”をやっつける事。こっちに至ってはとっても簡単」
少女はいたづらっぽい笑みを浮かべながら高々に宣言した。
「なぜなら私が居るから!!」
そうピースサインをしながら笑う少女。
暗くなる話の中で少女のその笑顔は暗闇に差し込む太陽の様に見えた。
小さな声で「今度は失敗しない・・ハズ」と言っていたのは聞かなかった事にしよう。
昨晩であった人形の様に美しい少女は私の為に何とかしてくれると、そう言ったのだ。
「・・・お願いしても良い??」
「もちろん!!泥船に使った気持ちで待っていなさい」
いろいろと間違っているが今はこの子のひたむきな明るさに救われるばかりである。
背後を振り向くと黒い化け物がすぐそこまで迫っていた。
化け物は今一度鋭い咆哮を放ち蛇行しながらこちらに迫り寄ってきた。
少女はそれに合わせて再び何かを唱え始めた。
(でもコレ、さっきと言っている事と違うような……)
『滲み出す肉汁 熱々の唐揚げ 醤油とレモンを合わせ 弾けろジューシー!!』
(この子は何言っているのだろうか……)
「今夜は焼肉よ!!」
ブラック・サン・ライズ
【美味しく焼き揚げる真丸グリル‼】
心の声が駄々洩れな福音声と共にソレは突如目の前に出現した。
少女と高速で迫りくる黒い化け物の合間に現れた黒い球状何か。
ソレは歪な音を響かせながら、周囲の大気を吸収しビー玉程度のサイズに収縮する。
その後突如膨張を始め、その姿を現した。
それは直径5mサイズに圧縮された小さな太陽の様な球体だった。
突進してきた黒い化け物はブレーキをかける事も進路を変える事も出来ずに
その火球に自ら飛び込んでいった。
頭、胴、そして尾の先まで全て余す事無くそれに突っ込んで行き、
こちら側に出てくる頃には塵の一つも残されずに焼き消されていった。
「・・・・・」
私はその光景を只々見つめていた。
先日突如現れた自称魔法少女は死の恐怖を感じさせる化け物を
一瞬で亡きモノへとしたのだ。
彼女はまごう事無き魔法を操る少女だった。
少女は燃え盛る火球を消しながらこちらを振り返ってこう言った。
「ざ、ざっとこんなもんよ」
震えた声で無理やり笑顔を作っていたように見えるが、
手足も震えているので気のせいでは無い様だ。
「あ、あの……」
「だって!あんなにデカいのが出ると思わなかったんだもん!!ちょっとだけ鼻先を燃やして『森にお帰り!』って言おうと思ったら本気で襲ってくるし普通に怖かったわい!」
と、涙ぐみながら外観相応の反応をしながら少女はひとしきり喚いた。
暫くして落ち着きを取り戻した少女は
今更ながら威厳を保とうと見上げながら上から目線でいう。
「さて、おねぇさん私に何か言う事は無いかしら」
その態度がとてもかわいらしく先程の火球を作り出した者とは到底思えなかった。
「……あり、がとう」
「どういたしまして!別に目も前の脅威を取り除いたに過ぎないわ」
少女の言う通り根本の原因は解決していないだけど……
「どうしたら……」
「簡単な話よ、おねぇさんが魔力を制御できるようになれば良いのだもの。その為に私が来たんだから。
「え⁉ それって??」
「あなたのおばあさんに頼まれたわ」
そう言って少女は一枚の名刺を差し出す。
【魔道立探偵事務所“図書館”】
「今日からあなたは私の助手よ“瞳”」
こうして文乃瞳と魔法少女マリアによる二人のちょっと甘酸っぱい怪異譚が始まった。