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瞼を閉じた先に見る光景はいつも同じだった。
肌を照り付けるような日光、あたりに轟かせるセミの鳴き声、
その声よりも耳障りな人の小さな笑い声。
ひんやりとした冷気が下から上へと舞い上がり、
外との気温差から境界上の景色が歪む。
冷気のする方へ一歩、また一歩と灯りの無い階段を下っていく。
目の前には鉄格子が一つ。
扉には南京錠が付けられておりカギ穴がつぶされている。
唯一壁の上にある格子状の小さな窓からその中を照らすように光が差し込まれる。
その光に照らされているのはボサボサに伸びた真っ白の髪の毛、
骨の様に細くなった手足をした虚ろな目をした一人の少女がいた。
変わり果てたその姿を見た自分だったがそれでも一目見て分かった。
1年、本家の命令で山に修行に行った自分が戻って来た自分を待っていたのは、
かつての面影を失ったたった一人の【妹】の変わり果てた姿だった。
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